刑事訴訟法にもとづく刑事告訴は、取消(とりけ)すことが可能です。
これは、刑事訴訟法の第237条に明記されています。
ただし、注意点としては、告訴を取り消した場合、再度告訴をすることはできません。
それなので、加害者への処罰断罪を最優先したいのであれば、絶対に告訴は取消してはならないといえます。
検察官が公訴提起をするまで取り消せる

刑事訴訟法の第237条では、このように明記されています。
刑事訴訟法 第237条(告訴の取消し) 1 告訴は、公訴の提起があるまでこれを取り消すことができる。
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上記の、1項目の部分にあります。
公訴の提起があるまで、取り消せると書かれていますね。
これは、検察官が、正式に被疑者(犯人)を起訴する手続きを行うまでは、取り消せると言う意味です。
しかし、注意点も当然あります。黄色のマーカーをしていますので、分かりますね。
「告訴の取消をした者は、再度告訴をすることができない」
という部分です。
取消をしてしまうと、被疑者を刑事裁判にかけることは、永久にできなくなるということです。
これは、刑事告訴の本質を考えれば分かります。
告訴は、警察と検察という、極めて重要な国家機関が、関与するからです。
捜査機関の職務執行と、公益の保護

まず、刑事告訴を警察が受理すると、警察は犯罪事実を捜査し、事件を必ず検察庁まで送致する義務が発生します。
これは、刑事訴訟法の第242条に明記されています。
刑事訴訟法 第242条 司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。 |
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このように、明記されています。
そして、検察官も、犯罪事実を補充で捜査しなければなりません。
その後、嫌疑が十分あり、違法性もあると判断すれば、公判請求(被疑者を刑事裁判にかける手続き)をしなければなりません。
そして、警察と検察は、国家機関です。
つまり、国民から徴収した貴重な税金で活動している組織だということです。
もし一般市民の気まぐれなどで、告訴を何度も取消したり、何度も繰り返し告訴できるようにしてしまえば、どうなるでしょうか?
そのたびに、警察と検察は、多大な犯罪の捜査や調書作成などの業務に追われてしまいます。
そうなると、その他の重大な職務にも悪影響が出るのは、必然と言えます。
警察と検察も、対応可能な人員もお金も限られていますからね。重大な事件などで活動している警察署も数多くあります。
それなので、市民の気まぐれなどで、警察や検察の職務が妨害されることを防ぐために、告訴を取り消せるのは1度だけと決められている、ということです。
お金と引き換えに、告訴を取り消すのは、賢い方法

なお、刑事告訴を取り消す最良のタイミングは、詐欺事件ならば、
詐欺師(加害者)が起訴されることを恐れて、和解を申し出てきたとき
です。
情報商材などの詐欺も、2019年になってからは、逮捕者も出ています。警察も、もう情報商材詐欺を、特殊詐欺だと認定していることも、多いのです。
それなので、詐欺師が逮捕される可能性も十分にあると言えます。
逮捕されれば、詐欺師は刑事裁判にかけられたくないので、当然ながら、被害者に示談・和解を持ち掛けてきます。
この時が最良のタイミングです。
お金と引き換えに、刑事告訴を取下げれば良いのです。
再度、刑事告訴をすることはできなくなってしまいます。しかし、大切なお金を奪い返すことは可能です。
確実に起訴できる保証が無いのが、現実
検察庁の不起訴率は、実は高いのです。逮捕されたものであっても、5割(ほぼ半分)は不起訴で終わっているというデータも、あります。(犯罪白書などの統計に基づく)
また、逮捕されず、書類送検されたものに至っては、何と7割~8割ほどの被疑者は、不起訴というのが現実です。
つまり、仮にもし、詐欺師を逮捕できたとしても、刑事裁判にかけられる保証は皆無だということです。
それならば、考え方を変えてしまうのも一法だということです。
詐欺師を刑事裁判にかけることよりも、被害金を何とか取り戻すことに焦点を当てた方が、実利実益は伴います。
詐欺師に刑事罰を与えることに拘りがなければ、お金を取り戻して、終結させることも賢い方法だと言えます。
まとめ
ポイントをまとめますと、以下の通りです。
告訴を取り消すかどうかは、告訴権者の意思1つです。しかし、刑事告訴を取り消すのであれば、くれぐれも慎重に決定して下さい。
再度、告訴をすることはできませんからね。
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