詐欺事件で告訴状を受理させるポイント

告訴状は基本的に正当な理由が無ければ、司法警察員である警察官は必ず受理しなければなりません(検察官も同じ)。

しかし、悲しいことですが、警察はとにかく不当な理由をつけて、告訴状を受理しないことが多いと言えます。

そこで、これらを受理させるにはどうすれば良いかを、知る限り御伝えします。

裁判所が、告訴・告発を不当に受理しないのは違法だと認めた

1981年(昭和56年)の5月20日に、東京高等裁判所が、以下の判決を出しました。つまり、正当な理由がなければ、告訴状や告発状は、必ず警察は受理しなければならないという判決を、裁判所が出していたのです。

昭和56年5月20日 東京高等裁判所 「告訴・告発」に関する判決

司法警察員および検察官は、犯罪構成要件に該当しないもの、公訴時効を迎えたもの、および記載事項が不明瞭で、犯罪事実が特定されていないものを除いて、告訴・告発を受理する義務を負う。

このような高等裁判所の判決結果が出ています。つまり、

・犯罪構成要件を満たさないもの
・公訴時効をむかえたもの(検察官が公訴提起をできる期限を終えた犯罪)
・犯罪事実が特定されていないもの

上記の3パターンに該当しなければ、基本的に告訴状などを警察は必ず受理しなければならないということです。

法律上でも明記されている、刑事告訴の取り扱い

また、刑事告訴については、刑事訴訟法上でも、しっかりと明記されています。警察はこれを受理した場合、

・犯罪事実の捜査や証拠収集を開始すること
・供述調書や補充の調書(書類)を作成すること
・上記と共に、事件を必ず検察庁に送致すること

これらの義務が発生します。

犯罪捜査規範(警察の内部規律) 63条

司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない。

刑事訴訟法第 241条

1 告訴又は告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならない。
2 検察官又は司法警察員は、口頭による告訴又は告発を受けたときは調書を作らなければならない。

刑事訴訟法 第242条

司法警察員は、告訴又は告発を受けたときは、速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない。

つまり、警察は告訴状を受理してしまうと、多大な労力を投下して犯罪捜査などを行い、更に被疑者が逃亡や証拠隠滅の恐れがあれば、捜査段階で被疑者を逮捕する必要もあります。

それなので、仕事を増やしたくないので、あの手この手を使って、不当に理由を付けて刑事告訴などを受理したがらないことも、少なくないのが実情です。

証拠の提出は任意であって、必須では無い

ちなみにですが、警察がよく使う告訴状の不受理のときの返答として、

「立件して、起訴できるだけの証拠が不十分なので、告訴状を受理できません」

「証拠を十分用意してから、再度告訴をして下さい」

などと言い、告訴状を受理しないことが多いのですが、これも正当性が皆無の主張です。

証拠の提出は任意であって、告訴の必須条件ではありません。

証拠は本来、捜査機関である警察などが、告訴状を受理して、犯罪事実の捜査を行う過程で収集するべきものだからです。

告訴の成立に必用なのは、あくまでも以下の2点のみです。

・犯罪構成要件を満たす、犯罪事実

・加害者を処罰して、刑事裁判にかけて欲しいという「処罰意思」

被害者(告訴人ら)から証拠の提出などがあれば、証拠品を領置(捜査官や裁判所などが取得)することになっています。

しかし、証拠の有無を理由に告訴を受理しないことは、不当で不適切ということです。

ただし、それでも証拠は多いほうが良い

ただし、矛盾するようですが、可能な限り証拠は多く存在したほうが無難です。

詐欺罪の立証に有用な証拠が数多く存在する状態と、皆無の状態では、警察の対応が変わることもあるからです。

現実問題として証拠が数多く存在すれば告訴状が受理された後で、事件の早期解決に結びつく可能性もありますので、被害者も可能な限りここは協力してあげましょう。

主に情報商材詐欺の証拠になるものは、以下のものです。

・詐欺商材のセールスレター(販売サイトの広告文)

・商品(実際の詐欺商品)

・詐欺師から送信されてきた電子メール

・銀行やクレジットカードの利用明細

・SNSなどの書き込み

・特定商取引法に基づく表記のページ

また、より詳しい解説などは当サイトの
情報商材詐欺の証拠を集める5つの方法
をご参照頂ければ幸いです。

電子ファイルとして保管しても良い

また、保管方法は、書面や紙などの文字媒体が可能であれば望ましいです。しかし、通話録音などの音声や、動画などの電子データであっても、証拠能力としては全く問題ありません。

オススメは、外付けハードディスクやフラッシュメモリーなどに、データを保管してしまい、それを刑事告訴の際に一緒に警察に提出することです。

後は、銀行明細書やクレジット明細など、詐欺師に自分はお金を確かに支払ってしまったという証拠物も、無くさないようにしましょう。

詐欺罪の成立には、

欺罔行為⇒錯誤⇒財物の交付・転移⇒因果関係

この4条件が必要です。

それなので、証拠の確保も被害者自身が、可能な限り早期に抜かりなく行うようにしましょう。

不当に受理しない行為は、「公務員職権乱用罪」に該当

また、もし警察官が告訴状などを正当な理由なく受理しなかった場合は、刑法第193条の公務員職権乱用罪という犯罪行為に該当します。

刑法第193条 公務員職権乱用罪



刑法193条
公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、2年以下の懲役又は禁錮に処する。

これは、刑事告訴を犯罪被害者が行う権利があるにも関わらず、不当に警察官(公務員)が受理せず、権利行使を妨害しているからです。

犯罪被害を被ったものは、告訴することができるというのは、刑事訴訟法の第230条にも明記されていますからね。

刑事訴訟法第230条

犯罪により害を被った者は告訴をすることができる。

引用元ウィキブックス

不当に受理しなかった場合は、監察官室または、公安委員会への苦情申し出を

もし警察官が犯罪構成要件に該当する犯罪事実で、公訴時効をむかえていないものにも関わらず、受理しなかった場合はどうすれば良いのでしょうか?

この場合は「苦情申し出」を行うことにより、受理を目指します。

苦情申し出制度というのは、警察官が職務遂行においてふさわしくない行いなどがあると判断した場合、以下の場所に、書面にて、該当する警察官の行為を連絡し、改善させるというものです。

・監察官室(通常、都道府県の本部と呼ばれる警察署に存在。画像は長野県警のもの)

・都道府県の公安委員会

上記の監察官室と、公安委員会は、警察職員が不当な職務執行や職務怠慢をしていると判断した場合、改善を促し、監督を行うことができます。

そして、

・いつ
・どこで
・どの地域の担当警察官が
・どのような不当な職務執行をしたのか

これらを、書面に記載し、苦情申し出書という形で、提出しましょう。私も過去に経験は1度だけですが、あります。

ただし、期待しすぎない方が良い

しかし、結論から申しますと、この苦情申し出制度にもとづいて、書類を提出しても、警察が告訴状を受理する保証はありません。

むしろ、期待しすぎないほうが良いと思います。

実際、私もある詐欺事件の刑事告発が不当に受理されなかったことを、東京都の公安委員会に通知したのですが、その結果がコレです。

確かに弁護士の方に依頼して告発状を作成したのですが、警察(東京都の警視庁管轄の警察)が不受理にしました。
その後に苦情申し出を行ったのですが、この有様です。

全く効果が無かったと言わざるを得ないので、悲しいことですがこれが現実です。

保証は無くとも行動を

ですが、警察と検察を動かさなければ、刑事手続きはいつまでも開始することはできません。

被害者が諦めて何もしなければ、結局は詐欺師だけが得をして、被害者だけが泣き寝入りをするという、最悪の結果になってしまうのです。

刑法上の詐欺罪の時効は事件発生から7年間なので、7年以内に、何としてでも被害者自身が行動し、刑事告訴を行って下さい。

可能性は低くとも、法律上は告訴状は警察官らは受理しなければならない規定には、なっているので、強気に出て下さい。

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