民法における無効と取消の違いは、最初から意思表示(契約)自体が存在しなかったことになるのかどうか、この部分につきます。
無効
⇒最初から存在しなかったものとして扱われる。このことにより、購入の意思表示自体が最初から存在しなかったことになり、契約も無効になる
取消
⇒契約の意思表示は存在したものとして扱われるが、権利者が取消を主張することで契約前に遡り、意思表示を無効にすることが可能(逆に言うと被害者が取消を主張しなければならない)

つまり得られる結果自体は同じことです。悪徳商法などにおいても売買契約を無効にする効力を持つことは、どちらも同じだと言えるということです。
また、有効期間や権利行使者においても違いがあります。
1 有効期間の存在 2 追認の可否 3 主張できる人 |
1は有効期間です。
無効は有効期間が全く存在しません。つまり、何年経過しようとも無効な契約はずっと無効にできるということです。
これに対し、取消は追認が可能になった時点から5年以内(もしくは意思表示があったときから20年以内)が取消の権利行使ができる制限時間です。
ちなみに、追認とは取消を行いませんと主張し、意思表示(契約)をずっと有効にすることです。
民法126条
取消権の期間の制限
取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過したときも、同様とする。
続いて2番目です。追認の可否ですが、これは無効の場合は一切適用することはできません。
取消の場合のみ追認は可能ということです。
民法119条
無効な行為の追認
無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
最後の3番目、主張できる人です。
無効は誰でも無効にすることを主張することが可能です。といより、無効となる場合は主張せずとも、法的に無効にできますので主張の必要がありません。
取消の場合は、取引権者と呼ばれる人のみが取消を主張することができます。
民法120条
取消権者
1 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2 詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
取消を主張できる人ですが、詐欺事件においては騙された被害者は間違いなく取消を主張できますので特にここでは難しく考える必要はありません。
まとめると、以下のようになります。

無効で代表的なものは、以下の通りです。
・民法95条
錯誤無効
・消費者契約法第8条
事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効
・消費者契約法第9条
消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効
・消費者契約法第10条
消費者の利益を一方的に害する条項の無効
続いて取消の対象となる法律はこれらです。
・民法96条
詐欺又は強迫による取消
・消費者契約法第4条1項1号
不実告知
・消費者契約法第4条1項2号
断定的判断の提供
・消費者契約法第4条2項
不利益事実の故意の不告知
詐欺事件においても消費者が被害金を回復するための根拠となる重要な要素が、無効と取消です。
ただ、得られる結果自体に全くと言っていいほど違いは存在しないと覚えておいて下されば良いと思います。
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