詐欺罪での立件が難しい理由 「刑法第38条」がある為

詐欺罪を立証・立件することが難しい理由として、刑法第38条の存在があります。

つまり、加害者が明らかにわざと、最初からお金をだまし取る目的で、被害者からお金を受け取ったことを証明しなければならないのです。

犯罪構成要件を満たしてはいるものの、詐欺罪で検察庁が公訴提起(起訴)をしたがらない大きな理由でもあります。

「故意犯」を証明する必要があるので、難しい

まず、重要な法律として、刑法第38条があります。その1項部分にはこのように記載されています。

刑法第38条

1項 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。

引用元ウィキブックス

上記の赤字部分に記載されているとおり、「罪を犯す意思が無い行為は罰しない」とあります。

それなので、原則的に犯罪行為を行ったとされる被疑者を刑事裁判にかけて、刑事罰を適用する為には、この故意犯だったことを、検察側が証明しなければなりません。

そして詐欺罪での故意というのは、

被疑者は最初からどう考えてもわざと、明らかに人を騙すつもりでお金を受け取ったのか?という点です。

お金の貸し借りで考えると分かりやすい

故意犯を分かりやすく解説するために、例を出します。AさんとBさんという2人の人物がいるとします。

Aさんが、Bさんにお金を30万円貸し与えました。Bさんは6か月後に一括で30万円を全額返済するという合意・約束の上で、契約書も書かせてあります。

しかし、6か月後になっても、Bさんが約束のお金を返しませんでした。

ここで、Aさんが

「騙された!Bさんは詐欺師だ。刑事告訴してやる!!」

このように考えたとします。お金を返すと言う合意の下で最初から契約までさせたのに、お金を返さなかったので、Aさんから見れば、騙されたと感じるのは正常な感覚です。

しかし、Bさんはある理由がありました。

お金を借りた2か月後に、自分の親族が急病になり、どうしても高い治療費を、毎月支払う必要が出てしまったのです

この場合、仮にもし警察に刑事告訴を行ったとしても、残念ながらBさんを詐欺罪で起訴できる確率は、限りなく0に近いと言えます。

なぜならば、Bさんはやむを得ない事情で返済ができなくなったのであり、最初から悪意を持ってウソの理由を告げてお金を借りた(騙した)わけでは無いと、周辺事情から判断されるからです。

このような理由もあり、民法上の債務不履行である可能性が高いので、警察も詐欺罪での告訴を、積極的に受理したがらない大きな理由です。

故意は、基本的に加害者だけが分かること

そして、刑法上の詐欺罪の争点となる「故意(わざと)」の部分ですが、これは直接的に、犯人意外の第3者が突き止めることは不可能です。

人間が過去にどのような意思決定を行ったのかという内心面は、当人にしかわかりません。

超能力者でもあれば別かもしれませんが、過去にその人が当時何を考えていたのか、手に取るように分かるという人は、いませんからね。

それなので、悪意があったかどうかというのは、事件の経緯や周辺事情から断定していくしかないのです。

豊田商事事件が詐欺罪となった理由


画像引用元は、時事巷談さまのサイトから)

また、日本で過去最悪の詐欺事件として有名になった、豊田商事事件があります。もうご存知の方も多いと思います。

豊田商事の会長である永野一男氏が、老後の単身世帯を主な対象として行っていた詐欺事件です。

経緯は以下の通りです。

永野氏が、「純金を買い付けるから、お金を出してほしい」と言いつつお金を老人たちに出させていました。

しかし、実際には純金をまったく購入せず、純金を購入しましたという証書(紙切れ)だけを、被害者に手渡していたというものです。

いわゆる現物まがい商法(ペーパー商法)であり、詐欺の1種です。

被害総額は1000億円以上(実際には2000億円程度)という桁違いの被害規模で、最終的に永野氏は殺害されました。

この豊田商事事件が詐欺事件となった最大の要因は、代表の永野氏がお金を受け取っておきながら、現物の純金を約束どり購入していなかったことがきっかけでした。

顧客(被害者)はお金を出して純金の現物を購入していると信じていたのですが、豊田商事の営業拠点の倉庫には、純金が保管されていないことが、後に発覚したからです。

純金は偽物が保管されているだけで、本物の純金など無かったのですから、勿論大問題となりました。

最悪の結末となりましたが、この場合、豊田商事側が、

「純金を買うから、お金を出して下さい」

上記の理由で被害者にお金を出させたにも関わらず、実際には全く現物の純金を約束通り購入していなかったので、この部分を欺罔行為としてとらえることができたのです。

また、故意犯の証明も簡単でした。

純金が用意されていたと思ったにもかかわらず、保管されていたものはニセモノだったのですからね。

警察・検察も、明らかに当初から故意に詐欺を行う意思があったと見なしたのです。

情報商材詐欺の場合の故意犯

刑法第38条にお話を戻します。情報商材の詐欺を刑事事件として扱う為にも、故意犯の証明が必須です。

しかし、情報商材の詐欺は主に、稼げる方法を情報として販売している為、効果を保証することができない事例も多々あります。それなので、詐欺罪での立件は難しいと言えます。

たとえばですが、以下のようなものがあります。

・転売(せどり)
・情報販売(情報を売るビジネス全般)
・アフィリエイト
・株やFX、仮想通貨などの投資

これらは基本、どんなものであっても稼げるかどうかは個人差があります。

万人が億万長者になれる方法があるわけが無いので、結果が出ないことを理由に詐欺罪だという事自体が殆どできないというのが実態です。

しかし、それならば情報商材詐欺を詐欺罪で立件することはできないのかと言えば、そんなことはありません。

近年になって情報商材詐欺を行い、逮捕された実例もあります。

情報商材屋が逮捕された実例

1 神谷隆介 氏(TURKS)

2019年に、インターネット上で「簡単ネットウォッチング」なる転売で稼ぐ方法の情報商材を販売していたが、後に詐欺罪および特定商取引法違反の疑いで逮捕。

2 石塚幸太郎 氏(RE・JAPAN PROJECT)

2019年に逮捕された事例。「お金を出して仮想通貨に投資してくれれば、毎月何もしなくてもプロ中のプロである投資集団たちが、お金を増やすので出資して下さい」といい、被害者のお金をだまし取った事例。これも同様に詐欺罪で逮捕された。

これ以外でも、近年になってからようやく、情報商材屋が逮捕されるようになっています。

ポイントは、いずれも以下の場合であれば、故意犯を証明できる可能性は高まり、詐欺罪で立件できる可能性が高くなります。

・稼げなければ返金すると返金保証を明記しておきながら、実際には全く返金保証に応じなかった
・投資するといいお金を集めたが、お金を全く投資運用に使っていなかった

・成功者の声や実績などが、完全に虚偽だった

・商品やサービスを、そもそも事業者側(詐欺師)が被害者に提供していなかった

おおよそ、上記のような場合です。

上記の4パターンであれば、最初から悪意を持ってわざと被害者からお金をだまし取った故意を証明することが簡単になります。

それなので、詐欺罪で情報商材詐欺師を立件できるかどうかの目安になれば幸いです。

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