刑法上の詐欺罪の犯罪構成要件、つまり詐欺罪を適用させるうえで必要な条件は、
- 欺罔(ぎもう)行為
- 錯誤
- 財物の交付転移(処分行為)
- 因果関係
上記4つです。これらが全て存在することで、初めて刑法上の詐欺罪が成立しえます。
犯罪構成要件についての解説
まず大前提として、犯罪構成要件とは何かについて解説します。犯罪構成要件というのは、刑法上の犯罪行為であると認定する為に必要な条件・原則のことです。
詐欺罪においては、前述のとおり、

↓
4 因果関係(1~3まで)
では1つずつ解説を行います。
1 欺罔(ぎもう)行為

1つ目の欺罔行為とは、他者の金銭・財物を騙し取るために、真実とは異なる虚偽の情報を意図的に伝えることです。分かりやすく言うと、ウソを付くということです。
これがまず最初に存在しているかどうかというのが、ポイントとなります。
一般的な情報商材詐欺では、ウソの返金保証や、虚偽の実績・広告宣伝と全く異なった商品内容などが、欺罔行為に該当します。
2 錯誤

次に2番目の錯誤について解説します。錯誤というのは、被害者が詐欺師のウソを信じて、ウソの情報を真実だと錯覚、つまり勘違いしてしまうということです。
1の欺罔行為の結果、被害者が詐欺師のウソを信じて、真実ではない情報をあたかも本当だと信じこんでしまっている状態だと考えて頂ければ結構です。
3 財物の交付・転移(処分行為)

そして3番目に、財物の交付・転移(処分行為)が発生していることが、詐欺罪の犯罪構成要件に含まれます。
これは簡単なことで、被害者が金銭などの財物・資産を詐欺師に渡してしまう行為のことです。
錯誤に陥った被害者が詐欺師を信じて、銀行振り込みやクレジットカード決済により、お金を詐欺師に差し出してしまった、状態ということです。
因果関係が全てに成立して、初めて詐欺罪が適用される

そして、欺罔行為・錯誤・財産の処分行為(交付~転移)の、3条件すべてに因果関係が成立して、初めて刑法第246条の詐欺罪は成立しえます。
つまり、
1 詐欺師がウソの情報を伝える(欺罔行為) |
この中のどれか1つでも欠けていると、詐欺罪は成立しえません。
たとえば、詐欺師がウソをついて被害者が錯誤していたとしても、お金を詐欺師に振り込んでいなければ、3の処分行為は発生していないので、詐欺罪とはなりません。
この場合は詐欺未遂罪が適用されます。
故意犯を証明することも難しいことも

また、警察・検察を通じて詐欺師を起訴~有罪判決を確定することが難しい理由の1つに、故意犯を証明することがあります。
これは、刑法第38条の1項に基づいて、わざと犯罪を犯す意思が無い者を処罰することはできないという、法律に基づくからです。
これは警察が詐欺罪での告訴状などを受理しない傾向にある大きな理由の1つでもあります。故意犯とは、文字通りわざと・意図的に犯罪を犯すということです。
詐欺罪も故意犯であることが条件なので、お金を受け取った最初の段階から明らかにわざと騙すつもりだったと証明することが求められます。
お金を相手が返済しない場合であっても、実は複雑
例えば金銭の貸し借りなどで、期日までにお金を必ず返すという約束のもとで貸していたにも関わらず、相手がお金を返さなかったので、詐欺罪で刑事告訴するとしましょう。
お金を貸していた人からすれば、勿論だまし取られたと怒りを感じるのは至極当然です。
ただし、重要なのは
- 最初から、わざと、お金を返すつもりがなく騙したのか
- やむを得ない事情で途中からお金を返せなくなったのか
この2つのどちらかなのかということです。
最初からお金を返すつもりがなかったとしても、ではそれをどうやって証明するのかということが、実際にはとても難しいと言うことも少なくありません。
また、生活に困窮したり急な出費などが必要になり、どうしても返済ができなくなったのでお金が返せなくなっただけならば、民法上の債務不履行として扱われます。つまり、刑事事件としては扱えません。
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このように、単純にお金を相手が返さなかったからということだけで、詐欺罪が即時成立するということにはならないのが、悲しいですが現実なのです。
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